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札幌高等裁判所 昭和51年(ネ)26号 判決

控訴人

永森末喜

外四名

右五名訴訟代理人

土井勝三郎

被控訴人

登別町開拓農業協同組合

右代表者

鎌田直吉

右訴訟代理人

芝垣美男

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの連帯負担とする。

事実《省略》

理由

一先ず、控訴人らの本訴の適否について判断する。

(一)1  被控訴人が農業協同組合法(以下、「農協法」という。)に基づいて設立された農業協同組合であることは、当事者間に争いのないところであるが、本訴は、控訴人らが、昭和四八年七月一六日に開催された被控訴人の臨時総会(以下「本件総会」という。)においてなされたことになつている別紙目録記載の各議案決議の無効確認を求めるものである。農協法には、商法第二五二条を準用する旨の規定は存しないが、控訴人らに本訴による確認の利益を肯認することができる限り、商法第二五二条の規定の類推適用により、控訴人らは本訴を提起することが許されるものと解するを相当とする(最高裁第一小法廷判決昭和四七年一一月九日民集二六巻九号一五一三頁参照)。

2  被控訴人は、控訴人らに本訴による確認の利益がない旨主張する。よつて案ずるに、

(1) 控訴人らがいずれも被控訴人の組合員であり、且つ昭和四五年五月一五日開催された被控訴人の通常総会においてその理事に選任され、控訴人永森末喜はその頃理事の互選により被控訴人を代表する組合長に選任された者であること及び昭和四八年七月一六日に本件総会が監事門西軍策の招集によつて開催されたことは当事者間に争いがなく、〈証拠〉によれば、本件総会において別紙目録記載第一ないし第五号議案(以下、右各議案をそれぞれ「本件第一号議案」、「本件第二号議案」等という。)がいずれも審議可決されたこと(但し、本件第二、第三号議案の決議は選挙に代わる無投票当選決定の決議としてなされたものであることは後に判示するとおりである。)が認められ、被控訴人が右各決議を有効として、これを無効とする控訴人らと争つていることは弁論の全趣旨に照らし明らかである。なお、本件第二、第三号議案である役員選任議案の決議に関して更に検討してみるに、〈証拠〉によれば、本件総会における本件第三号議案の決議によつて被控訴人の監事に就任したことになつている訴外津川新次郎の招集により、昭和五一年七月三一日被控訴人の第二五回通常総会が開催され、右総会において、理事、監事の任期満了に伴うものとして新らたな理事、監事の選任決議がなされ、これによつてそれぞれの後任者(但し、本件第二号議案の決議によつて理事に就任したことになつている別紙目録記載の鎌田直吉外五名は理事として重任)が選任されたことになつていることが認められるのであるが、若し本件総会でなされた本件第三号議案の決議が無効であつたとすれば、当然に、前記津川新次郎は被控訴人の監事に就任していなかつたことになるから、被控訴人の右第二五回通常総会はこれを招集する権限の無い者の招集した総会であつたということになり、従つて被控訴人の総会としての存在を認め得ないものになるといわざるを得ず、引いては、右総会でなされた右判示の役員の選任決議もその存在を認め得ないものに帰するほかなく、而して〈証拠〉によれば、その場合、本件第二号議案の決議により被控訴人の理事に選任された者は、右決議が被控訴人主張のとおり有効なものである限りは、被控訴人の定款第三七条四項の規定により、新らたに選任される理事が就任するまで理事としての権利義務を有していることになるものであることが認められる。以上認定の事実関係によれば、控訴人らと被控訴人との間には、本件総会における本件各決議がなされたことに因る現在の法律上の紛争が存在することは容易に推認しうるところであつて、本件各決議が有効か否かを確定することは、右紛争の直接且つ抜本的な解決のために最も適切であつて且つ必要なことと認められる。

(2) 被控訴人は、控訴人らが被控訴人と事業目的を同一にする別組織の協同組合である訴外登別市畜産農業協同組合を設立して、活動しており、他方被控訴組合は今後解散手続をするのみであるから、理事の選任をめぐつて紛争を続けることは実益がないと主張するが、仮りに控訴人らが被控訴人の右主張のとおり別組織の協同組合を設立して活動している事実があるとしても或いは被控訴人が今後解散手続をするのみであるとしても、そのことによつて本件訴の利益がなくなるものとはいえないから、被控訴人の右主張は失当である。

(3) また、被控訴人は、控訴人らが先に、申請した理事職務執行停止及び職務代行者選任の仮処分申請事件がその後異議手続で取下げられ、本件総会において選任された理事はその職務執行が認められて円満に業務活動をしているから、本件訴の利益はないと主張するが、右主張の事実を認めるに足りる証拠はないので、右主張も採用することができない。

(4) 以上のとおりであるから、控訴人らの本訴には確認の利益があると認めるを相当とする。

(二)  被控訴人は、控訴人らが農協法第九六条一項によつて行政庁に対して本件総会における本件各議案決議の取消請求の手続をとることなしに本訴を提起したものであるから本件訴は却下ないし棄却を免かれないと、主張し、また、本件総会の招集手続には明白且つ重大な誤りがないから、農協法第九六条一項により本訴は不適法であると主張する。よつて案ずるに、農協法第九六条一項の規定は、その規定の趣旨から見て、農業協同組合の総会における議決又は選挙等についての司法判断の前審手続を定めたものと解するのは困難であり、殊に右総会の議決又は選挙が当然に無効であるか又は不存在である場合においては、これを主張する者は、同法第九六条一項所定の行政庁による取消の手続を経なくても、裁判所に右議決又は選挙の無効又は不存在の確認の訴を起こすことができるものと解するを相当とする(最高裁第二小法廷判決昭和四六年一二月一七日民集二五巻九号一五八八頁参照)。而して、控訴人らが本件総会における本件各決議が当然無効なものとして本訴を提起している以上、本件総会招集手続の誤りが明白且つ重大でないか否かというようなことは、本件総会における本件各決議が当然に無効か否か若くはそれが不存在とみるべきか否かにのみ係わる問題であつて、本訴の適否には関係がないものといわなければならない。よつて被控訴人の前記主張はいずれも失当である。因みに〈証拠〉によれば、被控訴人の組合員江口晴咲は、控訴人永森、同清川、同小森、同佐々木を含む外一五名(組合員総数の一〇分の一を超える)の組合員の同意を得て農協法第九六条一項に基づく、本件総会においてなされた各決議の取消請求を、本訴提起前である昭和四八年八月二日に、所轄行政庁である北海道知事に対してなしたこと、しかしこれに対する右知事の裁決は未だなされていないことがそれぞれ認められる。

(三)  以上のとおりであつて、控訴人らの本訴は、適法なものであり、本訴の却下を求める被控訴人の本案前の申立は失当である。

二そこで本案である控訴人らの本訴請求の当否について判断する。

(一)  農業協同組合の総会における決議にいかなる瑕疵があれば、それが当然無効となるかについては、実定法上明示の規定がないので、これを解釈によつて決するほかない。先ず、右決議の内容が法令又は定款に違反しているときは右決議は当然に無効なものと解するを相当とする。次に、右総会の決議と一応目されるものが存在する場合であつても、その成立過程に重大な瑕疵があるため、これを法律上総会の決議と評価するのが当を得ないものと認められるようなときは、右決議は不存在と解するを相当とするが、決議の当然無効を広義に解すれば、右のような決議不存在の場合をもこれに包摂せしめることが可能であり、本訴における控訴人らの決議当然無効の用例は、これによつているものであることが、弁論の全趣旨から明らかである。

(二)  控訴人らは、本件総会を招集した監事門西軍策には、総会を招集する権限がなかつたから本件総会における本件各議案決議は当然無効である旨主張する。よつて案ずるに、招集権限のない者の招集によつて開催された総会は、法律上、これを総会というを得ないからそこでなされた決議は不存在というべきであり、広義における決議当然無効の場合にあたるものといわなければならない。そこで、監事門西軍策に本件総会招集の権限がなかつたか否かについて考察する。

1  先ず、本件総会が開催された前後の頃、被控訴人の定款として有効に行われていたものは、どれであつたかについて見るに、〈証拠〉を総合すると、甲第一八号証(乙第八号証は同じもの)は、昭和四五年五月一五日以前から存した被控訴人の定款であり(以下、これを旧定款」という。)、被控訴人は右同日の総会において旧定款の変更をなし、その結果被控訴人の定款は甲第一号証のとおりのものとなつたが(以下、これを「新定款」という。)、右旧定款の変更につき北海道知事の認可を得たのは、昭和四八年九月二六日になつてはじめてであつたことが認められるので、右同日以前は右定款変更の効力が生じておらず(農協法第四四条二項参照)、従つて右同日までの間は旧定款が効力を有していたことになる(以下、特に断ることなしに定款というときは、旧定款をいう。)。

2  ところで、農協法第三五条は、「組合員(準組合員を除く)が総組合員の五分の一以上の同意を得て、会議の目的たる事項及び招集の理由を記載した書面を理事に提出して、総会の招集を請求したときは、理事は、その請求のあつた日から二〇日以内に、総会を招集しなければならない。」と定め、同法第三六条は、「理事の職務を行う者がないとき又は前条の請求があつた場合において理事が正当な理由がないのに総会招集の手続をしないときは、監事は、総会を招集しなければならない。」と定めており、これに見合つて、被控訴人の定款第四一条二項二号、三項一号には、農協法第三五条、第三六条と同旨(但し、理事が請求のあつた日から二〇日以内に総会を招集しなければならないとの期間についての定めはなかつた。)の定めがあつたことが認められる。次に、農協法第三〇条二項は、組合の監事の定数は二名以上とすると定めているが、被控訴人の定款第二七条一項は、監事の定数を三名と定めていたことが認められる。複数の監事によるその権限行使の方法については、農協法上特別の定はなく、前示定款上も同様である。しかし〈証拠〉によれば、被控訴人の規約の第四章の第一五条は、監事は代表監事一名を互選すると定め、同第一六条は、監事会は、代表監事が招集することその他監事会の開催手続について定め、同第一七条は、監事会に付議すべき事項として、一号監事監査規程の設定及び改廃、二号監査の実施計画、三号監査の顛末及びその措置、四号その他必要な事項と定めていること、及び右規約上、監事会付議事項についての議決方法について定めはなく、右規約第一九条で議決事項及び賛否の数が監事会議事録の記載事項とされているにすぎないことが認められる。而して昭和四八年六、七月当時被控訴人の監事は、江口晴咲、門西軍策、宮越福太郎の三名であり、代表監事が江口晴咲であつたことは当事者間に争いがない。

3  控訴人らは、農協法上、また被控訴人の定款上、監事の定数は複数であるから、一監事が独立して単独で権限を行使することは認められておらず、殊に監事が総会を招集すべき場合それは右規約第一七条四号にいう「その他必要な事項」にあたるから、代表監事においてそれを監事会に付議し監事会の決議を経て、代表監事においてその招集をなすべきものであり、本件の場合監事会による本件総会招集についての決議はされておらず、代表監事江口晴咲及び他の監事宮越福太郎は本件総会の招集に反対していたにも拘らず監事門西軍策は代表監事でもないのに敢て総会を招集したのであるから、同人には本件総会招集の権限はなかつた旨主張するので、先ずこれについて考察する。

門西軍策が代表監事でなくいわゆる平監事であつたことは前認定のとおりであり、同人が本件総会を招集するにあたり、監事会の決議を経ていないことは、当事者間に争いがなく、また、代表監事江口晴咲及び他の監事宮越福太郎が本件総会の招集に反対であつたことは〈証拠〉によつて明らかであるが、当裁判所は、右の事実はいずれも、監事門西軍策に本件総会招集の権限がなかつたことの根拠とはなり得ないものと思料する。その理由は、次のとおりである。

農業協同組合は法人であるが(農協法第五条参照)、凡そ法人の監事の職務権限(民法第五九条参照)は、その理事の事務執行を監督するに在るのであるから、かかる、監事の職務権限の性質上、監事が数名ある場合であつても、監事は各自単独でその職務を行なうべきものと解するのが相当であり、農業協同組合の監事についても、その例外ではないというべきである(農協法第四一条参照)。前判示のとおり、農協法は、監事の定数を二名以上と定めているが(同法第三〇条二項)、このように同法が監事の定数を最少二名(偶数)と定めていることは、監事がその職務権限を行なうに当つてその過半数を以つてこれを決することなどは全く予想していないことを示すものとみることができる。尤も、農業協同組合の監事の職務権限には、農協法第四一条によつて準用される民法第五九条各号所定のもののほかに、農協法が特に監事の権限として定めた事項も若干含まれており(同法第三三条、第三六条、第三九条三項)、同法第三六条所定の、監事の総会招集権限もその一つである。而して農協法が特に監事の権限として定めた事項の中には、監事に対して本来は理事の権限に属する事項の代行権限を与えたものであるかのように見えるものもあり(同法第三三条、第三六条の場合)、右総会招集権限も亦かかるものの一つであるが、しかしながら農協法が特に監事にかかる権限を与えたのは、監事が理事の事務執行を監督する職務権限を有することによるものと認められるから、監事がその職務として農協法によつて特に与えられた、これらの権限を行使する場合であつても、前述の監事各自単独職務権限行使の原則の例外をなすものではないと解するのが相当であり、従つて農協法第三六条による監事の総会招集についても、同条所定の要件が具備する限り、監事は、単独で総会を招集する権限を有するものと解するを相当とする。監事が同法同条によつて総会を招集するには、理事が総会の招集を決する場合に準じて(農協法第四一条、民法第五二条二項参照)、定款に特別の定めがない限り、監事の過半数によつてこれを決すべきである、とする立論もあり得ないではないが、これは同法同条の規定が一見したところ、監事に対して理事の総会招集権限の代行権限を与えたものであるかの如く見えることに捉われた見解というべきであつて、採るを得ない。理事が総会を招集するのに、その過半数の決議あることを要するとすることは、理事が二派に分かれて各派がそれぞれ総会を招集すること無からしめるための方法として意味があるのに対し、農協法第三六条所定の場合に監事が総会を招集するのに単独でこれをなしうるものとすることは、組織体としての農業協同組合の機能を確実に保持するために(理事の職務を行う者がいないときの招集について)、又は少数組合員の総会招集請求権の実現を確実にするために(少数組合員による総会招集請求があつた場合の招集について)、意味があることに思を致すべきである。叙上、農協法につき考察したところによれば、農業協同組合がその定款において、監事が農協法第三六条所定の総会招集権限を行使するにつき、各監事によるその単独行使を制約するような規定を設けることは農協法における監事制度の趣旨に牴触するものであり、その規約において右のような規定を設けることについても固より同断である。被控訴人の定款が監事の定数を三名と定めていること前判示のとおりであるが、このことによつて叙上の判断が左右されるものではない。ところで、被控訴人の定款には、監事の職務権限行使の方法についてなんら規定がないが、被控訴人の前記規約上その第四章の第一五条以下には前判示のような規定があることは既に見たとおりである。しかし右規約上、監事会付議事項につき議決方法の規定がないことも亦前判示のとおりであり、このことは監事の具体的な職務権限行使の如き重要な事項が監事会に付議されることは予定されていないことを窺わせるものであるし、監事会に付議すべき事項として右規約第一七条に列挙されている事項中、第一ないし第三号所定の事項は、これを仔細に検討すると、監事のなすべき組合財産又は理事の事務執行状況の監査のための監査規程の設定及び改廃(第一号)とか、その実施計画とか(第二号)、その顛末及びその措置(第三号)とか、これを要するに、監事の職務権限行使に関する一般的ないしは爾前、爾後的な処置に関するものであつて、監事各自が単独でその職務権限を行使するのを制約するようなものではないことが明らかである。以上によつて見れば、監事による総会招集の如く、監事としての具体的な且つ重要な職務権限の行使たる事項が右規約第一七条四号にいう「その他必要な事項」の中に含まれるものとは、到底解することができない。なお、付言すれば、右規約上の監事会なるものは、右のように見てみると、理事会とは全く異質のものであつて、謂わば監事相互間の申し合わせないし意思連絡のための機関にすぎず、そこでなされた議決の如きは各監事を法的に拘束する効力は生じないものと考えられる。

よつて控訴人らの前記主張(3冒頭の主張)は採用できない。

4  次に、控訴人らは、被控訴人の理事であつた控訴人永森末喜が、同控訴人に対する、鎌田直吉外一四の組合員からの総会招集請求に基づく総会招集の手続をとらなかつたのは正当の理由によるものであつたから、監事門西軍策には本件総会を招集する権限はなかつた旨主張するので、これについて考察する。

(1) 昭和四八年六月二〇日鎌田直吉外一四名から、被控訴人の理事であつて組合長であつた控訴人永森に対し、解散議決の件、理事(清算人)選任の件等の審議を目的とする総会招集の請求がなされたことは当事者間に争いがなく、〈証拠〉によれば、右請求当時の被控訴組合の組合員数は四二名であり、他方右請求をした鎌田直吉外一四名中、角田信夫及び細谷ヤス子の二名(この両名は、後述のとおり、その組合員資格が問題となつていた者である。)を除く、少くとも一二名は組合員資格について問題のない組合員であり、従つて右請求は総組合員の五分の一以上の者の同意を得てなされたものであること、右請求は右判示の審議事項の外、招集の理由を記載した書面を提出してなされたものであることが認められる。従つて鎌田直吉らによつてなされた右総会招集請求は、農協法第三五条及び被控訴人の定款第四一条二項二号所定の総会招集請求の要件を具備したものであつたと認められる。

(2) ところで、控訴人永森が鎌田直吉らの前示総会招集請求に対し、右請求のあつた日から二〇日以内に総会招集の手続をとらなかつたことは、弁論の全趣旨によつて明らかであるが、控訴人永森が右のように総会招集の手続をとらなかつたことにつき正当な理由があつたか否かを検討してみる。

(ⅰ) 前示の〈証拠〉によれば、被控訴人の組合長であつた控訴人永森は、被控訴人の定款第七条三項に「組合員となろうとする者が組合員の資格を持つているかどうか明瞭でないときは理事会の過半数でこれを定める。」と定めていることを根拠とする理事会の決定に基づき、昭和四八年四月二二日頃角田信夫外八名の組合員に対し、同人らが被控訴人の組合員資格を喪失した旨の通告をしたこと(右通告をしたこと自体は当事者間に争いがない)が認められる。

(ⅱ) 昭和四八年六月五日開催された被控訴人の第二四回通常総会において、右通告を受けた者のうち角田信夫、細谷ヤス子、横山留吉、鎌田杉雄の四名(以下右四名を「角田信夫外三名」という。)につき同人らは組合員資格を有する旨の動議が提出されて、これが可決され、次いで決算報告承認議案が否決され、その余の議案の審議にははいらず散会となつたことは当事者間に争いがなく、〈証拠〉によれば、右通常総会に出席した正組合員数は三五名であつたこと、右判示の組合員資格に関する決議は訴外井野正揮の動議により投票によつてなされたものであること、その投票に際しては議長柳川常男は、控訴人ら外二名の理事七名及び外一名の計八名の者に対し投票権を認めず、投票させなかつたこと、右議長が控訴人ら外二名の理事七名に投票させなかつたのは、新定款(これが当時未だ効力を生じていなかつたことは、既に述べたとおりである)第五一条に「正組合員は、総会において、この組合と当該組合員との関係について議決を行なう場合においては、当該議決について議決権を有しない。」と規定されていること(旧定款にはかかる規定はなかつた)を根拠として、前示角田信夫外三名が組合員資格を有する旨の動議及び前示決算報告承認議案の各議決については、控訴人ら外二名の理事七名は新定款の同条所定の組合員に該当するとしたことによつたものであつたこと、当時、組合員中、前記井野正揮及び同人に同調する一派の者(以下、これら組合員を「井野派組合員」という。)は、控訴人ら理事が組合資金を浪費したり不正に支出したりしているとし、総会でこれを糾弾しようとする構えを見せていたこと、ところで右投票の結果は、前示の理事会決定を可とし、角田信夫外三には組合員資格はないとする者、及び前示の理事会決定を否とし、角田信夫外三名には組合員資格があるとする者がともに一二名となり、議長が理事会決定を否とし、結局角田信夫外三名が組合員資格を喪失したとする前示理事会決定を否定する旨の決議がなされたこと、他方、前示決算報告承認議案はこれについて意思表示した者一四名であつて、そのうち賛成した者一名、否とした者一三名で否決とされたものであつたことがそれぞれ認められる。なお、〈証拠〉によると、右第二四通常総会に付議すべく予定されていた議案は、第一号ないし第一一号議案計一一件であつたが、右総会においては、このうち第一号議案である前示決算報告承認議案が前叙のようにして否決されたほかはすべて審議未了になつたことが認められる。

(ⅲ) 右判示のとおり第二四回通常総会が他の議案の審議にはいらず散会したため、控訴人永森は、さらに、臨時総会を招集したこと、これに基づき昭和四八年六月一八日臨時総会が開催されたが、右総会が前判示の組合員資格問題で紛糾し、議案の審議にはいれないまま散会したことは当事者間に争いがなく、〈証拠〉によれば、控訴人永森が右臨時総会に付議しようとした議案は、第一号議案として、先きに第二四回通常総会で否決されたことになつた決算報告承認の件外四件であつたこと、右臨時総会の冒頭において、控訴人永森は、第二四回通常総会における角田信夫ほか三名が組合員資格を有する旨の決議及び決算報告承認議案否決の決議は、控訴人ら外二名の理事七名に議決権がないものとしてこれに投票させないでなされたものであるから無効である旨述べたところ、前記井野正揮が右各決議はいずれも有効であるとして一時間半にも亘つて反論し、議場が混乱し議事に入ることができず、理事者側で、第二四回通常総会における前記議決の成否についての行政庁の見解を求め、その解答あり次第改めて総会を開催すると一方的に述べて、臨時総会を流会にしたことがそれぞれ認められる。

(ⅳ) 昭和四八年六月二〇日に鎌田直吉外一四名の者から被控訴人の組合長理事であつた控訴人永森に対して総会招集請求があつたことは前述のとおりであるが、〈証拠〉によれば、鎌田直吉らの右総会招集請求において総会で審議すべき事項とされたものの中には、昭和四八年六月五日の総会(前記の第二四回通常総会)決議の実行という一項目が掲げられていたこと及び右総会招集請求をした組合員は、井野派組合員であつたことが認められる。

(ⅴ) 〈証拠〉によれば、控訴人永森は、前述のような状態のままで事案審議のため再び臨時総会を開いても紛糾必至と判断し、理事会の決定に基づき、昭和四八年六月二七日に監督行政庁である北海道知事に対し、同月二〇日付の書面によつて、前記第二四回通常総会においてなされた前判示の組合員資格問題の動議及び決算報告承認議案の各議決につき、理事に議決権が有るか否か及び右総会でなされた前記各決議が有効か否かについて、その監督、指導を仰ぐ意味で意見を求めたこと、理事会では右求意見に対する北海道知事の回答を得たうえ改めて臨時総会を招集することにしたこと、そして同月二九日に控訴人永森は鎌田直吉らの前記総会招集請求者に対し、右判示の求意見に対する北海道知事の回答を得次第、総会を招集する旨通知したこと、なお同日に右同様の通知を代表監事江口晴咲や監事門西軍策に対してもしたこと(右事実中、鎌田直吉ら総会招集請求者らと監事門西軍策とに対して右通知をしたこと自体は、当事者間に争いがない。)が認められる。

(ⅵ) 前示〈証拠〉によれば、被控訴人の組合員江口晴咲(代表監事)は、控訴人永森、同清川を含む外一五名(組合員総数の一〇分の一を超える)の組合員の同意を得て、農協法第九六条一項に基づき、昭和四八年六月五日開催の被控訴人の第二四回通常総会における議決が農協法第一六条、定款(但し新定款)第四七条等に違反するものとして、昭和四八年七月二日に、所轄監督行政庁である北海道知事に対して右議決の取消請求をしたことが認められる。

(ⅶ) 〈証拠〉によれば、控訴人永森は、昭和四八年七月一一日北海道知事の補助機関である道農地開発部長から前示の求意見に対する回答を得たこと、なお右回答の要旨は、求意見に係かる前示第二四回通常総会における組合員資格問題の動議及び前示決算報告承認の議案の議決につき理事は正組合員として議決に加わる権利を有するものであり、また右組合における右動議及び右議案についての前示議決は無効であるというに在つたことがそれぞれ認められる。

(ⅷ) 前示〈証拠〉によれば、控訴人永森は、昭和四八年七月一一日に前示求意見に対する前示回答を得るや、即日各組合員に対し、右回答があつたので早急に理事会を開き総会を招集する旨及びその日時等は決定次第通知する旨の通知をしたことが認められる。

(ⅸ) しかし控訴人永森が、監事門西軍策の招集にかかる本件総会の招集された同年七月一六日までに総会の会日を決めた正式の総会招集手続をとらなかつたことは既に判示したとおりである。

なお、〈証拠〉によれば、被控訴人の組合員のうち控訴人ら及びこれに同調する者らは、監事門西軍策の本件総会招集を無効であるとして、本件総会に出席しなかつたことが認められる。

(ⅹ) 以上認定の事実に基づいて考究するに、前示(ⅰ)及び(ⅱ)で認定の如く、被控訴人の第二四回通常総会において議長柳川常男が、控訴人ら外二名の理事七名に対し、井野正揮の提出にかかる、角田信夫外三名の組合員資格についての動議及び決算報告承認議案の議決をなすにあたり、新定款第五一条の規定を根拠として、右理事七名が新定款同条所定の組合員に該当するものとして、これに投票をさせなかつたことは、新定款は、前述のとおり、当時未だ効力を生じていなかつたのである(仮令、それが当時効力を生じていたものとしても、右動議及び議案について議決をなすにつき控訴人ら理事七名が新定款第五一条にいう組合員に該当するものであつたことは認められない。)から、農協法第一六条一項及び当時効力のあつた旧約款第八条本文(「組合員は各々一個の議決権(中略)を有する。」旨規定していた。)の各規定に違反したものといわなければならない。従つて前記動議及び議案についての各議決は、当然無効ではないとしても、その取消原因となる瑕疵のあるものであつたと認めざるを得ず、農協法第九六条の規定によつて、組合員がその総数の一〇分の一以上の同意を得て行政庁にその取消請求をすれば行政庁によつてそれが取消される蓋然性は高度に存したものといわざるを得ない。現に、右のような前示議決の取消請求が、後で、所轄行政庁である北海道知事に対してなされたことは(ⅵ)で見たとおりである。それゆえ、控訴人永森が鎌田直吉らの総会招集請求に応じて直ちに総会招集の手続をとつて総会を開催したとしても、その総会は、(ⅲ)で判示の臨時総会におけると同様に紛糾することは必至であつたと推認されるのみならず、仮にその総会で議決が行われたとしても、農協法第九六条による、前示第二四回通常総会における議決取消請求に対する北海道知事の裁決の帰すういかんによつては、前示組合員資格問題の関係上、その議決も亦同法同条による取消請求の原因となる瑕疵を帯びることとなる可能性が多分にあつたものと考えられるから、控訴人永森が、総会を招集する前に、被控訴人の監督行政庁である北海道知事に対して、その監督指導を仰ぐ意味で前判示のとおり意見を求め、その回答を得ることは、そのこと自体としては、極めて適切にして妥当な処置であつたといわなければならない。蓋し前示求意見に対する北海道知事の回答意見は、単なる参考意見に止まるものではなく、農協法第九六条による前示第二四回通常総会決議の取消請求がなされた場合に下されるべき裁決内容を示唆するものとして、次に開催されるべき臨時総会の紛糾を防止し、瑕疵あることとなる可能性のある議決がなされるのを防止するに役立つことが期待できた筈だからである。しかしながら、前示求意見に対する北海道知事の回答がいつ与えられるかについての保障があつたとは認め難いし(前示(ⅶ)のとおり、回答があつたことから推して右判断を動かすことはできない)、のみならず、そもそも組合員から適法な招集請求があつた場合に、総会を招集しても総会が紛糾する虞があるとか、その総会で議決しても瑕疵のあるものになる虞があるとかいうことは、理事が農協法第三五条所定の期間内に総会を招集するのを拒む正当な理由とはなり得ないことであるから、控訴人永森としては、前示求意見に対する北海道知事の回答の有無に拘らず、鎌田直吉らの前示総会招集請求のあつた日から、二〇日以内に臨時総会を招集しなければならなかつたものというべきであつて、同控訴人が右二〇日以内に臨時総会を招集しなかつたことについて正当な理由があつたものと認めることはできない。

(3)(ⅰ) ところで〈証拠〉によれば、監事門西軍策は昭和四八年七月五日に各組合員に対し、鎌田直吉外一四の者が同年六月二〇日に理事に対し、前判示の総会招集請求をしたのに対し理事は右請求のあつた日から二〇日以内に総会を招集すべきに拘らずこれをしようとしないから、農協法及び定款の相当規定に基づき臨時総会を招集する旨を記載した臨時総会開催通知書を交付して、本件総会の招集手続をとつたこと(監事門西軍策が同年七月五日に本件総会の招集手続をしたことは当事者間に争いがない)が認められる。

(ⅱ) 被控訴人は監事門西軍策が本件総会を招集したのは、前段判示の事由によるほか、被控訴人の定款に、監事が組合の財産の状況又は業務の執行につき不備の廉があることを発見し、これを総会に報告する必要があると認めたときには総会を招集することができるとの定めがあり、被控訴組合の経理上三〇〇〇万円を超える使途不明金のあることを発見し、これを総会に報告する必要があるものと認めたからであつたと主張し、恰も本件総会の招集が定款の右の定めにもよつたものであるかの如き主張をするので案ずるに、〈証拠〉によれば、定款第四一条三項三号に右主張のとおりの定めがあつたことが認められるが、たとえ監事門西軍策が本件総会を招集するにあたつて右主張のような必要を認めていたとしても、それによつて本件総会の招集が当然に定款の右条項によつたことになるものでないことはいうまでもないところであり、本件総会の招集が定款の右条項に基づいてなされたものでないことは前示甲第一一号証の記載によつて明らかであるから、被控訴人の右主張は採用できない。

(ⅲ) 鎌田直吉外一四名が昭和四八年六月二〇日被控訴人の組合長理事であつた控訴人永森に対してなした前記総会招集請求に対し、同控訴人が右請求のあつた日から二〇日以内に総会招集の手続をとらなかつたこと及びこれについて正当の理由があつたと認められないことは前判示のとおりであるが、そうだとすると、監事門西軍策は、昭和四八年七月一六日を会日とする本件総会を招集する権限を有したものといわなければならない。

よつて控訴人らの前記主張(4冒頭の主張)は失当である。

5  以上のとおりであるから、本件総会を招集した監事門西軍策に協会を招集する権限がなかつたから、本件総会における本件各議案の決議は当然無効(その不存在を含む)である旨の控訴人らの前記主張は採用することができない。

(三)  次に、控訴人らは、農協法第三五条、及び被控訴人の定款は、理事は所定の総会招集の請求があつた日から、二〇日以内に総会を招集しなければならないと定めているところ、控訴人永森が鎌田直吉らから総会招集の請求を受けたのは昭和四八年六月二〇日であるから、同控訴人は同年七月九日までに総会招集手続をすればよかつたのに、監事門西軍策は、その以前の同年七月五日に本件総会の招集手続をとつており、右招集手続は明らかに農協法及び被控訴人の定款に違反しているから本件総会における各決議は当然無効であると主張する。

よつて案ずるに、先ず、被控訴人の定款に右主張のような規定がなかつたこと前判示のとおりなので、定款違反を理由とする右主張は爾余の判断をなすまでもなく失当である。右主張のうち、農協法違反をいうものについて言えば、監事門西軍策が、(二)の4の(3)の(ⅰ)で判示したとおり、本件総会招集の手続をとつたことが、仮令、同法第三五条所定の総会招集の手続として控訴人ら主張の如く瑕疵あるものであつたとしても(前述のとおり、農協法第三五条は、組合員から同条所定の総会招集請求があつたときは右請求があつた日から二〇日以内に総会を招集しなければならないと定めているが、これは、右請求があつた日から二〇日以内を会日とする総会を招集しなければならない趣旨と解するのが相当のところ、控訴人永森としては鎌田直吉らから総会招集の請求を受けたのが昭和四八年六月二〇日であつたのであるから、昭和四八年七月一一日までを会日とする総会を招集すべきであつたこととなり、他方、同法第三七条三項は、総会招集の通知は、その会日から一〇日前までにしなければならないと定めているから、控訴人永森は、遅くとも昭和四八年六月三〇日までに総会招集の通知をしなければならなかつたこととなるのに、控訴人永森が昭和四八年六月三〇日を過ぎても総会招集の通知をしなかつたことは前判示したところによつて明らかであり、従つて監事門西軍策は同法第三六条により、鎌田直吉らの前記総会招集請求のあつた日から二〇日経過するのを待たず、昭和四七年七月五日に本件総会の招集手続をとることができたものと解する余地が充分にあるから、本件総会招集の手続には、控訴人らの右主張のような瑕疵はなかつたのではないかと思われる。)、(二)の4の(3)の(ⅰ)で判示のとおり、本件総会の招集通知は各組合員に漏れなくなされたものであり、且つ右通知の日から本件総会招集日まで一〇日以上あつたことも明らかであるから、控訴人ら主張の瑕疵は、それによつて、本件総会を総会として認め得ないものとする程に重大なものとは到底認めることができない。従つて本件総会招集手続が農協法に違反することを前提として、本件総会決議を当然無効(その不存在を含む)とする控訴人らの前記主張は、主張自体失当のものといわなければならない。

(四)  控訴人らは、本件第二、第三号の役員選任の議案は、無記名投票による選挙によつて決せらるべきところ、決議によつて決せられたは違法であり、右各決議は当然無効である、と主張する。よつて案ずるに、

1  農協法第三〇条三項は、農業協同組合の役員は、組合員が総会において選挙する。但し定款の定めるところにより、総会外において選挙することができる旨定め、同条四項は、役員の選挙は無記名投票によつて行うと定めて、同条九項は、役員は定款の定めるところにより組合員が総会においてこれを選任することができると定めている。そして〈証拠〉によれば、被控訴人の定款には、右の農協法第三〇条九項にいう定款の定めはなかつたことが認められ、また定款付属の役員選挙規程にも役員選出の方法としてはその第一二条に選挙は無記名投票によつてこれを行うと規定しているのみであることが認められるから、被控訴人においては、本件総会が開催された昭和四八年七月一六日当時、役員は、組合員が総会において無記名投票により選挙すべきものであつたこととなる。

2  ところで、本件総会において役員選任議案である本件第二、第三号議案が選挙によることなく、役員選任が決議によつてなされたことは、被控訴人の明らかには争わないところなので、これを自白したものと看なされるのであるが、これにつき、仔細に検討するに、先ず、〈証拠〉によれば、各組合員に送付された本件総会開催通知書には、付議事項として、「第二号理事(清算人)の選任について(清算人は七名)」、「第三号監事の選任について(監事三名)」という記載がなされていたことが認められる。而して、前示〈証拠〉(本件総会議事録)の記載によれば、本件総会においては、議長柳川常男が議事を進め、第一号議案が決議された後、右議長は、「役員の選挙を議題と致します。」と宣して、本件第二、第三号議案を付議したこと、そこで選挙管理人に指名された井野正揮が「現役員の任期は満了しているので、本総会において役員を選挙して頂きたい。定員は理事七名、監事三名であるが、先の昭和四八年六月五日開催された通常総会において、理事一名を市に委嘱する旨全会一致で承認されているので、結局理事六名、監事三名を選挙することとしたい。」と提案説明し、右議長が出席者に発言を求めたところ、「賛成。」との発言があつたので、右議長は、「提案どおり決定し、選挙を行います。暫時休憩します。」と宣し、休憩に入つたこと、右議長が開議を宣した後、右選挙管理人が「お諮り致します。只今迄届出のありました立候補者数は、先程決めて頂いた定員と一致します。そこで若し諒承が得られるなら、投票の繁を避けて立候補者名を発表し、その人では困ると云う人がいれば、その立候補者に限り無記名で信任投票をするということで如何なものでしようか。」と提案し、右議長がこれを諮つたところ、「異議なし。」との発言多く、拍手があつたこと、そこで右議長は、右選挙管理人に対し立候補者の氏名の発表を促し、右選挙管理人は理事、監事の立候補者としてそれぞれ別紙目録記載の鎌田直吉外五名、津川清次郎外二名の氏名を発表し、右議長が「只今発表の立候補者をそれぞれ選任することに異議ありませんか。」と諮つたところ、「異議なし。」の発言及び拍手があつたので、右議長は、「では理事、監事のそれぞれ当選が確定しました。」と宣し、役員の選任を了したことが認められる。

3  以上の認定事実によれば、本件総会における理事(清算人)、監事の選任は、無記名投票による選挙によらずに、選挙すべき役員の定数と立候補者数が一致したために、出席者全員の同意のもとに投票を省略して当選者を決定する方式によつたものであり、いわゆる無投票当選の決定を決議によつてしたものである。右のような無投票当選決定決議の方式を便宜採用したことは、前判示の農協法第三〇条四項に違反し、その点において、本件の役員選任には瑕疵があつたものといわざるを得ず、その瑕疵は、たとえ、右判示のとおり右方式の採用につき総会出席者全員が同意していたとしても、直ちに治癒されるものとは解し難い。

しかしながら、役員選任の方式における右瑕疵は、その内容についてのものではなくして、手続についてのものであり、且つ前判示のようにして役員が総会出席者全員の同意によつて選任された事実を考えると、これを重大なものとは到底いえないから(公職選挙法第一〇〇条参照)、それだけで本件第二、第三号議案の決議が当然に無効であるとは認められない。

4  よつて控訴人らの前記主張は、採用できない。〈以下、省略〉

(宮崎富哉 塩崎勤 村田達生)

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